能ある狼は牙を隠す
*
「そこで大丈夫だよ。ありがとう」
理科準備室にノートを運び終え、その言葉に私は小さく息を吐く。
帰りのホームルームの後、学級委員長の坂井くんは先生に雑用を託されていた。
彼は「ちょっと手伝って」と近くにいた私に声をかけてきたのだ。
「どういたしまして」
坂井くんとは全然話したことがないけれど、委員長というだけあって、真面目で温厚なクラスメートだ。
誰とでも気軽に話せてしまうし、周りをよく見ていると思う。
「白さん。一つ、聞きたいことがあるんだけどいいかな」
ノートの並びを整えていた私に、坂井くんは突然そう言った。
「え、な、何?」
「最近よく狼谷といるけど、二人って仲良いの?」
一体何を聞かれるんだろうと思えば。
思いがけない質問に、うーんと首を捻ってしまう。
「一応友達、かな」
「そうなんだ。……あのさ、悪く思わないでほしいんだけど」
「うん?」
「狼谷とつるむのは、やめた方がいいと思うよ」
「そこで大丈夫だよ。ありがとう」
理科準備室にノートを運び終え、その言葉に私は小さく息を吐く。
帰りのホームルームの後、学級委員長の坂井くんは先生に雑用を託されていた。
彼は「ちょっと手伝って」と近くにいた私に声をかけてきたのだ。
「どういたしまして」
坂井くんとは全然話したことがないけれど、委員長というだけあって、真面目で温厚なクラスメートだ。
誰とでも気軽に話せてしまうし、周りをよく見ていると思う。
「白さん。一つ、聞きたいことがあるんだけどいいかな」
ノートの並びを整えていた私に、坂井くんは突然そう言った。
「え、な、何?」
「最近よく狼谷といるけど、二人って仲良いの?」
一体何を聞かれるんだろうと思えば。
思いがけない質問に、うーんと首を捻ってしまう。
「一応友達、かな」
「そうなんだ。……あのさ、悪く思わないでほしいんだけど」
「うん?」
「狼谷とつるむのは、やめた方がいいと思うよ」