恋と、キスと、煙草の香り。
わたしたちの選択
「これが、全てだ」
新の話を聞き終わったあと、頭が真っ白になった。
新と出会ったのも、抱き合ったのも、好きになったのも全部仕組まれたことで、それを仕組んだのは颯さんで。
私は今まで、ずっと騙されていたの?
「本当にごめん。俺は最低な男だ。金に釣られて、環を騙して。でも本気で環が好きだ。いや、愛してる。信じてもらえないかもしれねえが、それだけは知っておいてくれ」
新と目を合わせられない。
私はうつ向いて、何も話す気になれない。
「お前…!裏切ったな!」
血を流しながら床に這いつくばる颯さんが、鬼のような形相で新を睨み付けている。
颯さんが傲慢で、自分勝手で遊び人だったなんて。
未だに信じられない。
もしかしてさっきの涙も、嘘?
「何だよ、環。何でそんな目で見るんだよ!?」
颯さんの気持ち、ずっとわからなかった。
優しい言葉にはいつもどこか気持ちがこもっていない気がしていた。
私のこと、好きじゃなかったのね。
優しい婚約者を”演じていた”だけ。
私たちの間には、愛なんて感情は一ミリもなかったのよね。
今更気づいたわ。