恋と、キスと、煙草の香り。
「私と別れたかったって本当?」

「それは…っ…この前までのことでっ」

「別れたかったからって自分で告げずに、第三者を使って私から別れを告げさせようとするなんて…ずるいわ。別れたいなら正々堂々言えば良かったじゃない」

「それは…」

「私のこと、愛してるなんて嘘。私と新が本気で愛し合っていたから、あなたは悔しかっただけ。そうでしょ?」

「…」

私がそう訊ねると、彼は口をつぐむ。
図星のようだ。

「今日で全部おわりにしましょう。私はあなたとの婚約を解消して、今日付けで会社を辞めるわ。でもお父様の常務の地位を剥奪しないって約束して。じゃないと全部ばらすから」

「ばらしたら、環が浮気していたことも言わないといけなくなるよ」

「そのときは全部、自分のしたことも白状するわ。あなたみたいに狡いことはしない」

私は立ち上がって、颯さんに告げる。

「今までありがとう。さよなら」

私は新のいるほうへと歩いていき、部屋を出ようとする。
すると後ろから颯さんの叫びに近い声が聞こえた。
< 102 / 107 >

この作品をシェア

pagetop