恋と、キスと、煙草の香り。
「環、俺の上着着ろよ」
「…ありがと」
私は新の上着を借りて、チャックを締める。
なんとかパンツは見えないくらいの丈だが、それでも足はスースーして仕方ない。
「今まで、悪かった」
新が先に、気まずい空気が流れていた私たちの沈黙を破る。
「…」
何と返事をしたら言いかわからず、私は黙る。
新が悪い訳じゃない。
悪いのは颯さんだ。
わかっているのに…
「俺は前科者で、まともな仕事にはつけない。
少年院を出てから自分がどうなろうがどうでもいいって思ってた。
だから今回、小松原にこの話を持ちかけられて、大金が手にはいるならいいかと思って、気軽な気持ちで引き受けた」
隣で話し続ける彼に、私は顔を合わせることができずうつむきながらゆっくりと歩き続ける。
「環を騙したことは最低だ。許されることじゃない。だけどこの話を受けなかったら、環に出会えなかった」
隣を歩いていた彼が私の一歩前に出て、私たちは向き合う。
彼は真剣で、何かが吹っ切れたような表情で私を見つめていた。
「環と出会って、俺はもう一度人生をやり直したいって強く思ったんだ。環の隣を堂々と並んで歩ける、そんな男になりたいって」
「新…」