恋と、キスと、煙草の香り。

「何年かかるかわからないけど、環に相応しい男になれたら…もう一度告白してもいいか?」


彼はいつも真っ直ぐだった。
少し強引なところもあるけれど、そんな彼に私は惹かれたのよね。


「私はずっと…両親の言うことを聞いていれば幸せになれると思ってたの。
だから両親に言われた通りの学校に入って、父が勤める会社に就職をして。
お金持ちで将来社長になる颯さんと結婚をしたら、仕事は辞めて専業主婦になって子供を産む。
私も全然苦じゃなかったし、そうなりたいと思ってたの」

でも私は、新と出会った。

単色だった世界がだんだんと色づいていって、
気づいたら世界がカラフルになっていた。


「あなたに出会って、私の見ていた世界は狭かったんだって気づいた。
人生観が180度変わっていたの。
もっと広い世界を見てみたいって思った」


騙されていたなんて、もうどうでも良かった。
それ以上に、彼からもらったものは沢山あったことに気づかされたから。
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