恋と、キスと、煙草の香り。
「私、実家を出る。
実家を出て、自分の目でこの広い世界を見てくるわ。

色々な場所に行って、たくさんの人と出会って、
それでも新以上の人はいないってなったら…
またあなたに会いにくる。

もしかしたら帰ってこないかもしれないわよ。
それでも待てるの?」

私がそう言うと、彼は笑う。

「もし帰ってこなかったら、環を見つけだすよ。俺、海外にいても地獄にいても、見つけ出せる自信あるよ」

「それは大袈裟すぎない?」

「そんなことねえよ。絶対見つけだす」

ほんとかなあ?
でも新なら、きっと見つけてくれる。
また出会える。
そんな気がする。


「それまでしばらくお別れね」

「ああ」

ここで一度お別れ。
なのに寂しいじゃなくて、なぜか清清しい気持ちの方が強かった。

「…じゃあね、新」

「ああ、元気でな」

私たちは笑いあって、反対方向へと歩きだす。
私がちらっと振り返ると、新もこちらを振り返っていた。
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