恋と、キスと、煙草の香り。
颯さんがそう言った瞬間、目があったと思えば彼の顔がぐっと近づく。

「いまここで、キス…してもいい?」

耳元に颯さんの息がかかり、ドキッとする。
照れているのか、少し頬を染めているところが可愛い。

颯さん。
そんなの、全然我が儘の域に入らないよ。

「聞かなくても、していいのよ?だって私たち、婚約してるんだから」

「いきなりするなんて僕にはできないよ。不器用なのは環も知ってるだろう?」

「知ってるわ。知ってて言ったんだもの」

「環は意地悪だね」

彼の唇がそっと私の唇に触れる。
柔らかくてあたたかい。



颯さんはとても素敵な人。

私にはもったいないくらい。
一緒に街を歩けば、すれ違う女性達が振り返る。

その度に私は優越感を感じていた。
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