恋と、キスと、煙草の香り。
「じゃあ環、また今度ねー!」
「うん、またね風花(ふうか)」
水曜日の仕事終わり、私は高校からの友人とディナーを終え、駅前で別れる。
婚約したと連絡をすると、お祝いしたいと返事をくれたので半年ぶりに会う約束をした。
お互い仕事が忙しくなかなか会えずにいたが、今日やっと予定があったので、大学時代によく行ったレストランで食事をした。
働いている会社の副社長と婚約したと言うと、驚いた顔をして”玉の輿じゃん!”と言った。
風花らしい返答だった。
風花はお茶目で、ノリがよい女の子だ。
学校のクラスの中では目立つような存在だった。
そのため先生には目をつけられ、よく注意されていたっけ。
風花は自分の意見をはっきり言う。
”そんなの息苦しくないの?”
大学生のとき私が理想の結婚の話をしたとき、そう言ったのは風花だった。
今日の食事のときにその話になり、
「まさか本当にお金持ちと婚約するなんてね。大学生のときはああ言ったけど、それが環の幸せなんだよね。まあ、環が幸せならいっか!おめでとう!」
と、風花は言った。
けれど風花は続けて、
”でも私はお金持ちかどうかはどうでもいいかな。この人となら一生楽しく暮らせる!って人と結婚したいな~”
と語っていた。