恋と、キスと、煙草の香り。
どうしようもなく惹かれるのは

約束、してしまったわ。

つぎの日の朝、ベッドから起きあがってすぐに我にかえる。

しかも名前しか知らない男の人と。
仕事も住んでいる場所も、年齢も名字すら知らないのに。

らしくない行動に、自分自身でも驚きを隠せない。
昨日2回目に出会って初めて知った、彼の名前。

「あらた…」

無意識にその名前を口にして、昨日のことを思い出す。

”環、お前変わったやつだな”

彼が私の名前を呼んだ瞬間、今までにない感情が芽生えた。
心が、心臓の辺りがきゅっと締め付けられて、熱くなる。

颯さんに初めて名前を呼ばれたときも、確かに胸が熱くなるのを感じた。
照れ笑いをする姿に、思わず私も笑っちゃったっけ。

でも颯さんに呼ばれたときと、彼に名前を呼ばれたときとは違う。

何が違うの…



ーーーープルルルル…!

机の上に置いていた携帯が大きな音で鳴り響く。
私はびくっと肩を震わす。

携帯を手に取ると、画面には”颯さん”の文字。
私はすぐに通話ボタンを押す。
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