恋と、キスと、煙草の香り。
「もしもし」

『もしもし、環?まだ寝てた?』

聞き慣れた颯さんの声が耳に入ってくる。
今日は少し声のトーンが低い気がする。
朝だからだろうか。

「いまちょうど起きたところよ」

私は布団から出て、床に足をつける。
すると足の裏に床の冷たさが伝わってくる。

『今から車で迎えに行くよ。30分後にそっちに着きそうだけど、大丈夫?』

「わかったわ。ちょっと待たせちゃうかもしれないけれど」

『いいよ。女性は準備に時間がかかるしね。家の近くで待ってるから、準備できたら連絡ちょうだい』

「ええ、わかったわ」

そう言って私は通話を切り、立ち上がって洗面台へと向かう。

颯さんは週に1、2回ほど、私を家まで迎えに来てくれる。
週の大半は出張や仕事で朝からは会社に行かないので、私は一人で出勤する。

早く支度しなくちゃ。
颯さんは忙しいのだから、あんまり待たせちゃいけない。

私は蛇口をひねり、火照った顔を冷たい水でおもいっきり洗った。
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