恋と、キスと、煙草の香り。
気づけばもう、再び水曜日がやってきた。
颯さんは今日から東京に出張で、明日の夜まで帰ってこない。
私は溜まっていた仕事を終わらせて、22時半前に会社を出る。
今日は断りに行くだけ。
断ったらすぐに家に帰って、お風呂に入ろう。
私は緊張しながら、夜道を歩く。
今日彼は本当にコンビニ前で待っているのだろうか。
お礼って、一体何をしてくれるのだろう。
そんなことを考えているうちに、コンビニの前に差し掛かる。
見たところ、誰もいないようだ。
腕時計を見ると、23時を回ったところだった。
自分で時間を指定してきたのに、いないじゃない。
私は唇を尖らせて、帰ろうと帰り道の方向を向いたところだった。
背中の方角からバイクの音が近づいてくる。
その音は私の後でとまった。
「おい」
その声に私は振り向く。
バイクの声の主は新だった。