恋と、キスと、煙草の香り。

午前11時。
私は部署の自分の席でパソコンに向かう。
少し気を緩めたら、昨日のことを考えてしまいそうになる。
私はそんな気持ちを振り払い、パソコンに向きなおす。

「有野君、ちょっと」

突然部長に名前を呼ばれ、びくっと肩を震わす。

「はいっ…!」

私は立ち上がって、部長のデスクの前へ急ぐ。

仕事に身が入っていないのがバレた?
もしかして怒られる?

「この書類を副社長のところに届けてくれないかね」

部長は私に書類を手渡す。

「え?でも確か、はや…副社長は夜まで帰ってこないのでは?」

「いや、さっきすれ違ったよ。早めに会社に戻ってきたみたいだよ。なのでよろしくね、有野君」

「…わかりました」

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