恋と、キスと、煙草の香り。
「今日久しぶりに僕の家に来ない?今日泊まっていきなよ」

「え…」

私は顔を曇らせる。

「今日何か予定があるの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど…ちょっと今日体調がすぐれなくて」

咄嗟に私は嘘をつく。

「え、大丈夫?今日早退する?」

颯さんの心配そうな表情に、ますます罪悪感が芽生える。

「ううん、大丈夫よ。少し休んだら治ると思うから。だから一応大事をとって、今日は定時に家に帰るね」

「わかった。今日は遅くなりそうだから送っていけそうもないよ。ごめん。今日はゆっくり休んでね」

「ううん、いいの。ありがとう。じゃあ部署に戻るね」

「うん、無理しないでね」

心配そうに私を見る颯さんを残して、副社長室を出る。
ドアを閉めた私は深いため息をつく。

駄目だ。
颯さんの顔をまともに見れない。

私は朝から新への思いと、颯さんへの罪悪感の狭間でさ迷っている。

どうしたらいいの?

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