恋と、キスと、煙草の香り。
答えが出ないまま、私は会社を出て帰り道をうつ向き歩く。

私は唇に触れ、昨日の夜の出来事が蘇る。
まだはっきりと思い出せる。

バイクを走らせる、彼の大きな背中。

私の手を引く、彼の後ろ姿。

隣に座る、彼の横顔。

唇の感触。

彼が吸う、煙草の香りーーーーー


顔が火照っていくのがわかる。
額に手を当てると火傷するように熱く感じる。
あれ、本当に体調が悪くなってきたのかもしれない。

「環」

あのコンビニの前に差し掛かったとき、左のほうからそう声が聞こえた気がした。

「あら…た…?」

目の前に新が現れる。

あれ、目の前に新がいる。
今日は水曜日じゃないのに。

夢かな?
私の、妄想?

どんどん目の前が霞んでいく。
新がもう一度私の名前を読んで駆け寄ってきた気がした。
そこで私の意識はぷつりと途切れた。
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