恋と、キスと、煙草の香り。
「ラブホテル」

新は真顔でそう言う。

「ああ…ラブホ………え?」

ラブホテル!?

私は我に返り飛び起きる。
普通にシンプルな部屋だったし、ラブホテルだなんて思わなかった…。
あたりを見渡すと、確かにラブホテルだと思わせる道具がちらほらある。
私は道具を見つけては目を逸らす。

「話しかけたら目の前で急に倒れたから、びっくりした。環の家知らないし、俺の家も近いわけじゃないから、偶然見つけたラブホに入るしかなかった」

そっか、私倒れたんだ。

帰り道でなんか視界がふわふわしているなって感じてたけれど、まさか熱があるなんて…。

「ごめんなさい…迷惑かけて」

倒れた私を抱えたまま、ここまで運んでくるなんて相当大変だっただろう。
新には初めて会ったときから迷惑かけっぱなしだな…。

「気にしなくていい。もともと今日は環に会いに来たから」

「私に?」

そう問いかけると新は頷く。

「昨日会ったばかりなのに、環に会いたくなった」

恥ずかしげもなくそんな台詞を言う彼に、私の心臓は大きく跳ねる。
新の言葉はいつもストレートで、私をドキドキさせる。

顔がますます熱くなる。
この熱さは熱のせいなのか、彼のせいなのか。
< 33 / 107 >

この作品をシェア

pagetop