恋と、キスと、煙草の香り。
「環…」

彼がそっと私の頬に触れる。
彼の真っ直ぐな目で見つめられて、心臓の鼓動がはやくなっていく。

「駄目だよ…わたし汗臭いから近づいちゃ」

「そんなこと気にしねえよ」

新の顔が近づいてくる。
私はとっさに新の唇を右手で覆う。

「駄目だよ、あらた…」

「何で駄目なの」

一瞬私の頭の中に颯さんの顔がよぎる。

「それは…もし風邪だったりしたら、新にうつっちゃうから…」

「いいよ、環なら。うつしても」

「あら…」

彼の唇を覆っていた私の右手は剥がされ、彼に唇を塞がれる。

「まって…」

必死に抵抗するが、新の力が強くてびくともしない。
私はベッドの上に押し倒され、何度も何度も激しいキスをする。



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