恋と、キスと、煙草の香り。
「……ねえ、新」
私はベッドに座り、煙草をふかす新の背中に話しかける。
「ん?」
「新って…」
そう問いかけて言葉を詰まらす。
彼は不思議そうな顔で私を見つめている。
「…ううん…何もないわ」
私は笑って誤魔化す。
新の気持ちを確かめたい。
でも聞いて
”好きじゃない””遊びだ”って言われたらどうするの?
もう会ってくれないかもしれない。
そんなの耐えられない。
「物足りないのか?」
新はそう言って意地悪な顔で笑う。
「次会うときは、あの夜景見に行きたい」
「ああ、あそこな。わかった」
新が吐き出した煙草の煙が広がる。
新と私の関係が始まった場所。
私にとっては思い入れのある場所。
でも新にとっては大したこともないのだろう。
あんな素敵な場所なら、他の誰かと行ったことがあるのだろう。
私は顔も知らない誰かに嫉妬する。
”次はいつ会える?”
そんな言葉は煙草の煙と共にかき消される。
いつものことだった。
ああ。
わたし、煙草のにおいついてるのかしら。
今まで気にしたことなんてなかったけれど、ふと思う。
でも新のにおいだし、いっか。