恋と、キスと、煙草の香り。
ああ、夢じゃないのよね?
本当に新と両思いなのよね?

「環、俺たち付き合おう」

新に好きだと言われることが、こんなにも幸せだなんて思わなかった。
再び涙が溢れていく。

「やべぇ…いますぐ押し倒して抱きたい。夜中、散々抱き合ったのにな」

彼がどうしようもなく愛しい。
私の持っているすべてを棄ててもいい。
新と一緒になりたい。
そうするためにはーーー

「返事は決まってるわ。でも…私、あなたと一緒になる前にやっておかないといけないことがあるの」

ちゃんとケジメをつける。
どれだけ失うものが大きく、軽蔑されようとも。

「1週間…待ってほしいの。その時に必ず返事をするわ」

真っ直ぐ彼の目を見つめる。
新は少しの間何も言わず、私の目を見つめ返す。

「…わかった、待つよ」

新はそう言って笑う。

「俺も環に言わないといけないことがある。1週間後…そのときに言うよ」

言わないといけないこと…
新にも何か秘密があるのだろうか。

「わかったわ。ありがとう…わたし今、本当に幸せよ」

また涙を流す私を、新は抱き寄せて強く抱き締める。

このぬくもり以外なにも要らない。
そう強く感じながら、私は決意を固めていた。

颯さんに今日、婚約を解消しようと告げようと。
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