恋と、キスと、煙草の香り。

今までずっと、純粋で優しい人だと思っていた。
いつも私や誰かのことを優先して、自分を後回しにするような人だった。
キスをしていいかと毎回事前に聞いてくるほど、婚約者の私にすら奥手だった。

でもこの6日間の颯さんは人が変わったように、私の気持ちなんか全部無視して、自分の思い通りに振る舞った。
今までベッドの上でこんなに激しく抱かれたことなんてなかった。
まさかこんな人だったなんて。
優しい仮面を、ずっとかぶっていたのかしら。




喉、渇いた…

私はベッドから降りようとするが、足がふらつき床に倒れこむ。
顔を上げると目の前には全身鏡。
やつれた顔で床に座り込む、男物のYシャツ一枚を身につけた私が映る。

颯さん、こういうのが趣味だったのね。

ベッドに手をつき、時間をかけて立ち上がる。
何度か倒れそうになりながら、壁を伝いふらふらとした足取りで寝室のドアを開ける。

リビングの横のキッチンに向かい、冷蔵庫を開け水の入ったペットボトルを取り出す。
近くにあったグラスに注ぎ、私は一気に飲み干す。