恋と、キスと、煙草の香り。
「僕の環をこんなに惚れさせて…まさかここまでとはね」

携帯を持っていない右手で、左胸を揉まれる。

「やだ!やめて!」

必死に抵抗しようとするがびくともしない。

『環に触るな!』

「僕から環を奪っておいてよく言うよ」

「もうやめて!」

「やめない!」

颯さんは手に持っていた携帯を投げ捨てる。
私は地面にぶつかって携帯の画面が割れる音にびくっとする。

「何で…何で僕じゃダメなんだよ!

僕なら環を一生不自由のない暮らしをさせてあげれるし、欲しいものがあったら何だって買ってあげる。

一生他の女なんか目移りなんてせず、環だけを愛せるって誓える。

それでも僕じゃ駄目なのか?」

私の頬に温かいものがポタポタと落ちる。
颯さんの涙だった。

このとき私は、こんなにも颯さんを傷つけていたんだと初めて気がついた。
あんなに優しかった颯さんを、こんな風にしてしまったのは自分のせいだ…
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