恋と、キスと、煙草の香り。

たくさん祝ってもらっちゃった。

私はお祝いの花束を抱え、夜道を歩く。
腕時計を見ると、22時半を回っていた。
思っていたより遅くなっちゃったわ。

夜道は街灯のみで、決して明るいとは言えない。
月は雲に覆い隠されてしまっている。

最寄駅から家まで歩いて15分ほど。
やっぱりタクシーに乗ればよかったわ。

ヒールを鳴らしながら、早足で家路を急ぐ。
コンビニを通りかかると、3~4人の男達がたむろしていた。

がらが悪そう。
できるだけ見ないようにしよう。

私が足早にコンビニの前を通りすぎようとしたとき、男達がこちらの方をちらちら見て、何かを話している。
そして一人が立ち上がって、私の方へと歩み寄ってきた。

「お姉さん、綺麗だね。今から帰るの?俺が送っていってあげようか?」

「…」

私は無視をして、下を向いて歩き続ける。
その男の後から、他の男達もこちらに近づいてくる。

「連れないなあ。今から俺と遊びに行かない?ねえったら」

男は私の左腕を掴んで引っ張ろうとする。
かなりの力だ。
痛い。

「いやっ…離して!」

私は必死に抵抗するが、びくともしない。

「いいじゃん、ちょっとだけ。大丈夫、俺たち優しいから」

私ではどうしようもない。
声をあげようとしても、声がでない。
怖い。

私はぎゅっと目をつむる。


誰か…っ!
誰か助けて!
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