恋と、キスと、煙草の香り。
「新…!?」

手を差しのべたのは新だった。
新がいることに以上に驚いたのは、彼の姿だった。

「新…血が…」

新のシャツにところどころ付く赤黒いシミを見て、はっとして再び颯さんのほうを振り返る。

倒れる颯さんの頭から流れる血。
それがどんどん床に広がっていく。

「…死んじゃったの?」

颯さんは全く動かない。
私はどんどん怖くなっていく。

「そんなに強く殴ってないから死んではないと思うけど」

新の足元に目をやると、血のついたトロフィーが転がっていた。
あれはこの部屋の棚に飾ってあったものだ。

「ほら、環。もう邪魔者は消えた。怖かったよな」

新は私の手を引っ張って立たせると、自分の方へ抱き寄せる。

「守れてよかった」
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