恋と、キスと、煙草の香り。
新の腕の中で思う。
彼は躊躇いもなく、颯さんを殴った。
そして隣で血を流して倒れているのにも関わらず動揺もせず、見向きもしない。
何でこんなことができるの?
「行こうか、環」
そう言って笑う新の顔には、小さな血が飛び散っていて私は怖くなる。
「でも颯さんが…」
「そんなやつ放っておけばいい。環にこんな酷いことをしたやつだぞ?死んだって仕方ない。それよりも早く出るぞ」
新は私の肩を抱いて玄関に連れていこうとする。
私は躊躇いつつも新に押されて玄関の方へ向かおうとすると、足首に何かが触れる。
「颯さん…!」
私の右足を颯さんが掴んでいた。
よかった…生きてたのね!
「いっ…ちゃ…ダメだ…」
颯さんの顔は血まみれで、声もかすれていた。