恋と、キスと、煙草の香り。
「環なら受け入れてくれると思った。でも…その反応を見てたら違ったんだな」

そう言って新はとても哀しい表情をする。
私の胸がズキンと痛む。

「環に軽蔑された今、もう一緒にいれないな。
環のもとを去り2度と目の前には現れない。
…でも最後に1つだけ…環に言っておかないといけないことがある。
環に1週間前に話すと約束した話だ」

新は真剣な眼差しで私を見つめる。
私は真っ直ぐ見つめられて、つい目を逸らしてしまう。
どういう表情で目を合わしたらいいかわからない。

「俺はずっと、環を騙していたんだ」

彼は思い切った声で私にそう告げた。

「どういう、こと?」

前科者だという話以外に、どんな秘密があるの?
私は緊張がピークに達し、両手に汗が滲んでいく。

「きみ…何を話そうとしている…?」

倒れこむ颯さんが新に向けてそうつぶやく。
そんな颯さんを新は一度睨み付けてから、すべてを語り始めた。
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