恋と、キスと、煙草の香り。
22時半頃。

飲んでいたコーヒーもちょうどぬるくなってきたとき、写真に写っていた女らしき人物が向こうから歩いて来るのが目にはいった。
花束らしきものを抱えていた。

『あいつだ』

俺は4人にそう合図する。
そして急いで4人から距離をとった。

女はちらっとこちらのほうを見てからすぐに目を逸らし、家のあるほうへと目を向けた。

『頼んだ』

俺がそう言うと、1人が立ちあがり女のほうへと近づいていく。

『お姉さん、綺麗だね。今から帰るの？俺が送っていってあげようか？』

『…』

女は無視をして、下を向いて歩き続ける。
残りの3人も立ちあがり、女に近づいていく。

『連れないなあ。今から俺と遊びに行かない？ねえったら』

女の左腕を掴むと、今にも泣きそうな顔をしながら必死に抵抗しようとする。

『いやっ…離して！』

『いいじゃん、ちょっとだけ。大丈夫、俺たち優しいから』

そろそろ、出ていくか。

俺は吸っていた煙草の火を消し、ぬるくなった珈琲を持ったまま女の方へ近づいていく。
そして珈琲を女の手を掴んでいる仲間に頭からぶっかけた。
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