恋と、キスと、煙草の香り。
『それ、誘ってんの』

『え…』

俺がそう言うと、女は頬を染める。

涙に濡れた、綺麗な瞳。
きめ細かく、薄ピンク色に染まる白い肌。
さらさらした綺麗な髪。

そんな目で見るなよ。

俺はなんでこんなにドキドキしてるんだ。
時間が経つほど心臓の鼓動が速まっていく。

俺は右手で彼女の顎をぐいっと押し上げ、自分の唇を彼女の唇に近づける。
そうすると彼女はぎゅっと目をつむった。

そんなことしたら男はみんな勘違いしちまうぞ。
馬鹿。

『なに目つむってるんだよ』

俺は女の顎から手を離した。
危うくキスしそうになっちまった。
そんな潤んだ瞳で俺を見るから…

『もっと嫌がれよ。だからあんな奴らに絡まれるんだよ、馬鹿か』

女はさらに頬を真っ赤に染める。
そしてうつ向く。

『さっさと帰れよ。もう絡まれても知らないからな』

俺はそう言い放ち背を向け、女のほうを一度も振り返らずにその場から立ち去った。
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