恋と、キスと、煙草の香り。
そのあと俺は家に真っ直ぐ帰って、ベッドにダイブする。
彼女の綺麗な瞳と火照った表情が、どうしても頭から離れない。

何だよ…何なんだよこれ。

ぐるぐるとさっきの出来事を思い返していると、テーブルの上の携帯が鳴り響く。
画面には”小松原”と表示されていた。

『…はい』

『小松原だが…今日は上手くいったか?』

電話の背景から騒がしい声が聞こえる。
今日もキャバクラに行っているようだった。

『…なかなか綺麗な女性ですね。手離すのが勿体ないくらい』

『ああ、だろう?綺麗なんだけれど、いまいち物足りないんだよね。誠実な男を演じるのも疲れたし、欲しかったら君に譲るよ』

『はは…』

淡々とした声で語る小松原に俺は、つくづくクズだなと言いかけて口をつぐむ。

女に会って、小松原が箱入り娘という理由がよくわかった。
見た目からして品が良いお嬢様だった。
俺とは住む世界が違う。
そんな女を俺に惚れさせろって?
そんなこと無理だ。
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