恋と、キスと、煙草の香り。
次に小松原から連絡が来たのは1週間後だった。

『今日環は友人とディナーを楽しんでから帰るそうだ。この前と同じくらいの時間にコンビニにいき、偶然を装って接触をしてほしい』

そう言われて22時過ぎに女の家の近所のコンビニを訪れ、煙草をふかしながら待機する。

今日は2回目の接触か。
どうすっかな…

買ったばかりの珈琲を飲みながら、俺はひたすら悩んでいた。

何も思い浮かばねえ。

吸っていた煙草の火を消し、新しい煙草を取り出そうとポケットに手を伸ばす。
すると思わず珈琲の紙カップが手から離れ地面に落とし、近くで煙草を吸っていた見ず知らずの男のスボンの裾にかかってしまった。

『おい。お前俺のジーパンに何してくれてんだよ』

その男は吸っていた煙草を俺に投げつける。

『悪い。クリーニング代は弁償する』

『それだけじゃねえだろ。熱々の珈琲かけられて火傷してたらどうすんだよ。治療費払えよ』

参ったな。面倒なことになった。
ズボンの裾にかかっただけなんだから絶対やけどしてねえだろ。

『何だよその顔。反省してねえな?てめえ、舐めてんじゃねえぞ!』

男が拳を振り上げて、顔に痛みが走る。
俺は地面にたおれこむと、そこからも何度も何度も殴られる。

そろそろ反撃するか。
そう思った時だった。
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