恋と、キスと、煙草の香り。
「女がこんな夜中に一人で歩いてんじゃねえよ」

「きゃっ…!」

金髪の男が私の腕を一気に引っ張る。
いきなり立ち上がったので私はふらつき、男の胸にすっぽりとおさまった。

腕に跡が残りそうなほどすごい力。
強引すぎる男に戸惑いながらも、私の胸の鼓動は激しさを増している。

「珈琲、台無しになっちまったじゃねえか」

彼はすぐに私から離れ、頭をぽりぽり掻く。
ふわっと煙草の香りがした。

「ごめんなさい!私、買い直してきます!」

「いい。萎えた」

彼はそう言い残し、私を背にして歩き始める。
行ってしまう。
あ…私まだお礼言ってない!

「あの…っ!」

ぶっきらぼうな言い方だったけど、私を助けてくれた。
お礼はちゃんと言わなきゃ。

「助けていただいて、ありがとうございました!」

彼は私の声に足を止めることなく、歩き続ける。

行ってしまう。
私は無意識に叫んでいた。

「何かお礼させてください!」

そう叫ぶと彼は足を止め、私の方へ振り向いた。

「珈琲駄目にしちゃったから、もっと美味しい珈琲ご馳走します!」

私がそう言うと、彼は私の方へとずかずかと歩いてきた。
そして顔を近づけてくる。
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