恋と、キスと、煙草の香り。
環はお嬢様育ちで品も良く、高級な服や装飾品を身につけている。
それに比べて俺は貧しい家庭で育った、前科もちのキャバクラに勤めるボーイ。
服は安いTシャツにパーカー、そして使い古したGパン。

月とすっぽんの環と俺。

小松原からの依頼で出会った俺たち。
それがなければ出会うこともなかった女。
今なら思う。
出会うならもっと自然に、対等な身分で出会いたかった。

惚れさせるために近づいたのに、こんなにも彼女に惚れている俺がいる。



ああ。
環が好きだ。


だからこそ、今日で会うのは最後にしよう。

小松原には断りの電話をして、金は返す。
そしたらいままでのように前科もちのただのキャバクラのボーイに戻ろう。

ポケットから携帯を取り出して、小松原の番号を表示させる。
ボタンを押そうとしたときに、向こうからかすかな布団が擦れる音が聞こえた。
俺がベッドのほうへ顔を覗かせると、環がベッドから起き上がろうとしていた。
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