恋と、キスと、煙草の香り。

『気がついたか』

俺は携帯をポケットに突っ込んで、環のほうへ歩み寄る。

『…新?』

彼女がベッドから出ようとしてバランスを崩したので、俺はそんな彼女の身体を支えてベッドに寝かせる。

『寝てろ。すごい熱だから』

『ねつ…?』

環は自分が熱があることを認識しておらず、状況がよくわかっていないようだった。

『ここ…どこ?』

『ラブホテル』

熱でぼーっとする彼女に俺はそう告げる。

『ああ…ラブホ………え?』

それを聞いた彼女はしばらく頭の中を整理したあと、いまどんな状況か認識したようで、あたりを見渡し顔を赤めた。

戸惑うのも当然だ。
お嬢様育ちの彼女がラブホテルなんかに来たことはないだろう。

『話しかけたら目の前で急に倒れたから、びっくりした。環の家知らないし、俺の家も近いわけじゃないから、偶然見つけたラブホに入るしかなかった』

やましい目的で入ったんじゃないと弁解はしたものの、彼女はそんなことどうこうではなく、うつむいて申し訳なさそうな顔をした。

『ごめんなさい…迷惑かけて』

『気にしなくていい。もともと今日は…環に会いに来たから』

俺がそう言うと、彼女は顔をあげてこちらを見る。

『私に?』
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