恋と、キスと、煙草の香り。
ああ。

何で”会いに来た”なんて言っちまったんだろう。

さっき決めたのに。
今日で会うのは最後にするって。

だからそんな潤んだ目で見ないでくれ。
決意が緩んでしまう。

ああ、駄目だ。
やっぱりーーー環が好きだ。

『昨日会ったばかりなのに、環に会いたくなった』

ベッドに手をつき、俺は環のほうへと顔を近づけていく。

『駄目だよ…わたし汗臭いから近づいちゃ…』

『そんなこと気にしねえよ』

俺の胸を押して遠ざけようとする彼女の腕を強引にどけると、次は俺の唇を右手で覆った。

『駄目だよ、あらた…』

『何で駄目なの』

つい口調が強くなる。
あんなクズでも、環は小松原が好きなのか?

『それは…もし風邪だったりしたら、新にうつっちゃうから…』

『いいよ、環なら。うつしても』

そんなどうでも良い嘘、通用するかよ。
小松原が好きなら好きって、はっきり言えよ。
そうしたら、もう2度と会わないから。

『あら…』

俺の唇を覆っていた彼女の右手を剥がして、無理矢理キスをする。

『まって…』

彼女は必死に抵抗してくるが、そんなか弱い力じゃ抵抗できないに決まってる。
嫌なら本気で殴れば良い。

俺は彼女をベッドの上に押し倒し、何度も何度も口を塞ぐ。

小松原が好きだと言われるのが怖かったから…
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