恋と、キスと、煙草の香り。
俺を見る彼女の目には涙が溜まっていた。
俺のことを思って泣いてくれているなんて、こんな幸せなことはなかった。

『環、俺たち付き合おう』

それを伝えた彼女の目からは涙がこぼれ落ちる。
涙を流す彼女はまるでテレビの中の女優のように綺麗で色っぽかった。
それを見て俺の頬が火照っていくのがわかった。

『やべぇ…いますぐ押し倒して抱きたい。夜中、散々抱き合ったのにな』

そんな俺を見て、彼女は微笑む。

『返事は決まってるわ。でも…私、あなたと一緒になる前にやっておかないといけないことがあるの。1週間…待ってほしいの。その時に必ず返事をする』

ああ、そうだった。
彼女はまだ、小松原の婚約者だった。

彼女があの男に別れを告げたら、これでもうこそこそせずに堂々と環とつき合える。

これであの男の思惑通りだった。

俺は…小松原と環が別れたら、あの男から成功報酬として100万をもらうことになっている。
本当にいいのか?もらってしまって。
でも受け取りを拒否したら、俺が環に本気になってしまったことがバレてしまう。

ならせめて、環にはすべてを話そう。
彼女は俺を軽蔑するだろうか。
でも俺は、嘘をついたままじゃだめだ。

『…わかった、待つよ。…俺も環に言わないといけないことがある。1週間後…そのときに言うよ』

俺はこのとき、環に全てを話すと覚悟を決めた。
もうすぐ、嘘から始まった出会いが本当の愛に変わるはずだったのに…。
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