恋と、キスと、煙草の香り。
『昨日環から婚約を解消したいって告げられたんだ。仕事を失って彼女の父をクビにされても別れたいって』

『小松原さんの念願通りになったじゃないですか。なのに、何故?』

『まあまあ、焦らずに最後まで聞いてよ』

そりゃ焦るだろ。
もう少しだったのに、いきなり別れないだなんて。

『全てを失っても僕と別れたいって、
君と一緒になりたいって言われてさ。
そんな環を見ていたら…
たまらなく愛しくて愛しくて仕方なくなって、
手離したくなくなったから、
手離さないことにしたんだ』

……は?

こいつ、なんて身勝手なんだろう。
世の中の全てが自分の思い通りになるとでも思ってるんだろうか。
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