恋と、キスと、煙草の香り。
『だから昨日の夜、一晩中抱いたよ。
あんなに興奮したのはいつ以来だろう。
環の乱れた姿、たまらなかったよ。
君もいままで散々味わっただろうから
わかるだろう?』

『お前…っ!』

こいつ…環を抱いたのか!
環の気持ちを弄んで…っ
殺意さえ沸いてきてしまいそうだ。

『なんだい、何か言いたいことでもあるのかな?まさか本当に環を好きになっただなんて…言わないよね?』

こいつ、俺の気持ちに気づいててわざと言ってるな?
でもこいつに反論したら…俺ごときなんて消されかねない。

『新くん、いままでお疲れ様。
本当によくやってくれたよ。
成功報酬のプラス100万、1週間以内に君の口座に振り込んどくよ。
今日でこの仕事は終わりだ。
君の店にはまたたまに寄らせてもらうよ。
じゃあね』

電話が切れると、俺は机を思いっきり蹴った。

クソッ!
環を抱いたなんて、聞きたくなかった。
小松原に抱かれる彼女の姿が頭に浮かび、かき消そうとしても消えない。
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