甘いキミの誘惑
ああ、どうか気づかないで。
そう願った矢先の田中くんの指摘。
観察眼がするどいんですね!なんて
そんなこと思ってる場合じゃない。
「これは別になにもないです!ちょっとゴミおちてたので!」
慌てて手紙を後ろ手に隠す。
というか、自分で言っておきながら、
ゴミって悲しくなってきた…。
でも田中くんにバレるよりは何億倍もマシなわけで。
──しかし。
「”田中くんへ”って書いてあるみたいだけど、ゴミなの?ほんとに?」
「へっ!?」
いつの間にか後ろ手に隠していたラブレターを田中くんに奪われていた。
「俺宛だよね?」
そうです。そうです。
まさしくあなたに渡すつもりだったんですけど、それはもう今じゃなくて!
どうしよう。
ぐるぐると色んなことが頭の中で巡る。
なんて言い訳しよう。
落ちてたので拾っちゃいました、とか?
って、そんなことある!?
「…田中くんのことが好きです」
「ひっっ!!!?なっ、な、なんで」
混乱する私をよそに、あろうことか田中くんはラブレターを読み始めた。口に出して。
「どうしたの?」
「いっ、いえ、なにもっ」