【完】たばこ

薫子、がどういう人物なのかも気になるけど。
私はそれ以上に翼に落胆する心を隠しきれなかった。


特別だと思っていた。
私と一緒だと思っていた。
好き、とかそういうものに惑わされないで。
空気感を感じ取っていく関係。


でも、違う。
今目の前にいる翼は。
薫子に翻弄される馬鹿な男だ。
薫子の策略にはまり。
どんどん沼にハマっていく。
女に惑わされる男。
私が一番嫌う、男。


すっと、翼に対する興味が薄れていく気がした。
さっきまで隣を歩く時に感じていた優越感が。
一気に崩れていった。
期待、外れ。
私の勘違いだった。


「薫子お待たせって、なにこれ?」


薫子の彼氏であろう人物が飲み物を持って登場した。
上手く状況を飲み込めていないようできょろきょろしていた。


「あっ。ごめんなさい。昔家庭教師をしていた生徒に偶然会って。」


軽く笑みを浮かべた薫子の行動で確信した。
こいつもキープか。馬鹿な男。


翼の顔を見てみれば、あからさまに傷ついた顔をしていた。


好きな人に騙された?
好きな人には好きな人がいた?


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