【完】たばこ

なんで俺じゃなくてこいつなんだよ?


そう思ってるの?
だったらバカだね。
本当、ことごとく期待外れ。
これ以上失望させないでよ。


最初から相手にされてないんだよ。
ガキだから。
自分が興味を持てない人は適当に遊んで切る。
こういう女の常套手段でしょ?


「私、帰りますね。」


「えっ、おい茜。」


「ごめん、なんか。冷めた。」


そういうと、薫子は今日一番の笑みを浮かべた。
そう、彼女は私と同じ。
搾取する側の人間。
獲物を選別できる人間。
上位の、選ばれた人間。
彼女こそ。特別だ。


あの場に翼を残して私は来た道を戻った。
展覧会への興味はまだ残っていたけど。
別日にでも出直そう。
そう思いながら歩いていると、横から声をかけられた。


「ねえ君、今ひま?」


声をかけてきた人物を見れば、顔は悪くなかった。
程良く遊んで。顔もいいから断られず。
調子に乗っている典型的な男。
……私も薫子に感化されたのかしら。


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