【完】たばこ
「良かったらお茶でもしない?」
「……ええ。」
私は特別な人間。
カースト上位に立つ優越感に浸れる人間。
搾取する側の人間。
今日も私は非日常を探し続ける。
私の人生に刺激を与えてくれる人間を。
隣に歩く男はたばこをくわえ吸い始めた。
その匂いが気持ち悪くて。
吸っているたばこを口から奪って地面に捨てた。
「おい、なにすんだよ。」
「嫌いなの、たばこ。」
潤んだ瞳でいえば引きさがる男。
……ちょろいんだよ。
たばこの匂い。
翼のだけは大丈夫だったな。
精錬された空気の中に異質な存在。
たばことブルーベリーの匂い。
光に照らされた翼の横顔は美しかった。
少し。少しだけ好きだった、あの時間。
もう、屋上へ行くことはないけれど。
いい思い出として、私の中に刻まれるのだろう。
冷めた目で空を見上げれば、青く澄んだ空が広がっていて。
ブルーベリーの飴が舐めたい、ふとそう思った。