【完】たばこ
他人に興味ない私。
だから同じクラスに居ても覚えていない人はいる。
だけどこいつみたいなやつだったら一発で覚える。
それくらい、印象的な顔立ちをしている。
たばこを吸う横顔がやけに大人っぽくて。
浮世離れしているように見えた。
「バラしてもいい?」
なんでだろう。
からかいたくなった。
その飄々とした仮面を、はぎ取りたくなった。
こんな好奇心は初めてだ。
心がふつふつ湧き上がっていくのを感じる。
そいつは私の言葉にもう一度こちらを向いた。
そしてまた一瞥した後、ふっと笑ってこう言い放った。
「お前、そういうタイプじゃないだろ?」
ビンゴだ。
この人は、こっち側の人間だ。
「私、茜。あんたは?」
「翼。」
「また来るけど。」
「勝手にしたら。」
「そうさせてもらう。」
「……これやるよ。」