【短】世界は君色に変わってく
とりあえず、宛名はシンプルに、直江先輩へ…にした。
内容も、当たり障りのない程度に…いや、とってもとっても控えめに…。
「いつも挨拶を返して下さって、ありがとうございます…もうすぐ修学旅行ですね。気を付けて行ってきて下さい。…良かったら、感想を教えて貰えたら嬉しいです…」
みたいなことを、書いた。
もう、手汗半端ない。
何回、ティッシュを箱から出して、握り締めたことか…。
「アンナ、ちゃんと持ってきた?」
「う、うん…でも…」
「よし、じゃあ、行くよ!」
「え?ちょ、彩美!待って、待って、待ってー!」
そんな私の静止なんて聞かずに、彩美はツカツカと先輩のすぐ後ろまで行くと、少し大きめの声で、
「先輩!おはようございます!」
と、声を掛けてしまった。
そして、にこにこと返事をしてくれる先輩にぺこっと頭を下げると、私のことをまるで生贄を差し出すみたいにひょいっと先輩の前に押しやって、
「はい。じゃあ、頑張れ!」
なんて耳打ちして、先へと行ってしまう。