【短】世界は君色に変わってく
「あ…ちょ、ちょっと…!」
私の声はさも聞こえません。
そんな彩美の薄情な背中を見て、仕方なく私は先輩の方をチラリと見やる。
と、そこには不思議そうな先輩の顔があって…私はもっと困ってしまった。
この状況で、話なんか出来るわけないじゃん!
ていうか、手紙渡せとか…拷問か!
そんなことを思って、泣きそうになっていると先輩が瞳を少し遠くから覗き込んでくる。
「えと、神咲さん?大丈夫?」
「え…っと…」
「…ん?」
少しずつ、だけど確実に学校へと歩を進めながらも、先輩は私の言葉に耳を傾けてくれる。
「あの…コレ…」
おずおずと差し出すちょっとだけよれてしまった淡いマリンブルーの封筒。
それを見た先輩は、ちょっと驚いた顔をしてから、すぐににっこりと笑って、
「じゃあ、俺も…」
と、やっぱり少しだけよれている淡い青色をした封筒を差し出してきた。
「…これ?」
「金本さんから、神咲さんは、手紙が得意だって聞いて…ごめんな?迷惑だった?」
「?!…あああああのっ!私こそすみません!なんかいつも…っ」
「大丈夫だよ?…と、あぁ、もう着いちゃうね。じゃあ、また明日!」
「あ…は、はい…」
何が起こったのか、まるで頭が現実を受け入れてくれない。
私は校門で先輩が中に入っていなくなってしまうまで、呆然とその後ろ姿を見守っていた。