【短】世界は君色に変わってく
「ちょっとぉー?それでぇー?どうだったの?どうだったのー?ちゃんと手紙渡したんでしょうねぇ?」
半ば後からやって来た生徒の波に揉まれるようにして教室へ辿り着くと、滅茶苦茶楽しそうな彩美からの洗礼を受ける。
「どうこうも!あの後大変だったんだからね!」
私は、置いてけぼりを食らったことに対してプリプリと怒る。
でも、彩美はニヤニヤしたままだった。
「手紙、渡したんだ?」
「う…だって…あの状況じゃ渡さない方が…変じゃん」
「で?で?めぐみ先輩の反応は?」
「……うん…」
ずいずいと、机を乗り越えんばかりで問い詰めてくる彩美に、少し距離を置きながら私は観念して事の経緯を話した。
「え!?それじゃ、先輩からラブレターもらったの?!」
「ちょ、あ、彩美…声大きいよ…しかもラブレターとかじゃ…」
「中身見た?!」
「…え、まだ」
「もう!駄目じゃん!」
ばし!
そう言って強めに肩を叩かれて、その痛みに顔を歪めると、彩美は大袈裟だとばかりにしかめ面をしてくる。
「はーやーく!」
「うー…わ、分かったよぅ…」
かさ
先輩から渡された淡い青色の封筒には、先輩をそのまま表したかのように、男の人からしたらとても整った字で、「神咲さんへ」と記されていた。
それだけでももう…顔は赤くなってしまうし、耳の近くに心臓があるんじゃないかっていうくらいドキドキするしで、私の指先は震えていく。