【短】世界は君色に変わってく
「おつかれー」
その言葉を聞いた時には、もうぐったりしていた。
もう、すっかり夕暮れとなり、私はいつものように千波先輩と帰宅することにする。
帰り道の中での話題は専ら、めぐみ先輩ことこばかり…。
「めぐみくんに手紙貰ったんだって?」
「それ、誰から聞いたんです?彩美ですか?」
「ううん。本人から」
「…あぁ、そうですか…って…え?!」
あの、自分のことに対しては口の固そうなめぐみ先輩が…なんで千波先輩にそんなことを?!
「ふふん。な、い、しょ。でも、アンナにはきっといいことだよ」
私の心の声を読み取ったのか、先輩は意味有りげに微笑むだけだった。
もう、訳がわからない。
手紙の内容と言い、先輩の何かを含んだ言葉といい、どうも不安と期待に満ちてしまう。
私は、自分の最寄り駅で先輩と別れてから、地上へと出てバス停へと向かった。
あぁ、今日も眠りが浅そうだ…。
先輩を思うようになってからというもの、寝不足の日が続いていて、私はフラフラだった。
それなのに、文化祭やら地区大会の日は一刻時一刻として近付いてくる。
…いや、その前に…先輩たちの修学旅行…か。
帰ってきたら、どんな話をするんだろう?
先輩は、私に何が言いたいんだろう?
「もー…どうしたらいいの…」
緩やかだった時は急激に変化し、歯車が一気に回ってしまったようだ。
今まで、この2ヶ月間の作戦が実を結んでくれたのか…そう思うと嬉しいような少し困ったような、そんな心境に陥ってしまう。
「これで、迷惑とか言われたら…私マジ泣きしそう」
ぽつりと呟いて、到着したバスに乗り込んだ。