【短】世界は君色に変わってく
その日、私は自習になった古典の時間を利用して、先輩へと手紙を書いた。
ルーズリーフしか用意してなかったのは痛かったけど、それでも心を込めて。
便せんには素直な言葉を載せた。
二人きりでちゃんと話せて嬉しかったこと。
手紙を読んでもらえただじゃなく、お土産の提案までしてくれたことをとても感激してること…。
つらつらと、そんな想いを綴っていたら、ゆうにルーズリーフ2枚半にもなってしまって、慌てて長くてごめんなさい、と締め括った。
先輩のことを考えるだけで、顔が熱くなる。
これが、恋ってことなんでしょうか?
認められるまでに、かなりの時間を使ってしまった。
でも、気づかせてくれたのは、他の誰でもない先輩の存在だった。
先輩たちの修学旅行先は、サイパン。
この時期の日本人からしたら、海に囲まれた常夏の地だなんて、憧れだろう。
じゃなくとも国外に出たことのない私にとっては、夢のような場所だから。
「あーぁ。先輩のいない1週間は、辛いねぇ?アンナ?」
「…それは、私をからかえなくて、つまんない彩美が、でしょ?」
「えへへ。バレたか」
確かに先輩がいない時間は腑抜けてしまいそうなくらい退屈だけれど。
でも、その間に自分を一つでも磨くことが出来たらいい、そう思えばそんなに大した時間じゃないかと思っていた。