【短】世界は君色に変わってく
そこから先輩が戻ってくるまでの時間は、気が遠くなるほど長く感じられた。
「おはよう」
と、ほんのり日焼けをして、益々目を奪われるほど格好良くなった先輩に声を掛けられたのは、修学旅行を終えてからすぐの週末明けだった。
私は如何に蓮沼くんを回避しつつ、学校生活を送るかで悩みに悩んだ結果、彩美とはなとその他に一緒にいてくれそうな男友達たちへ頼み込んで、常にグループで行動することにしていたから、先輩が帰国後登校してからも数日…様子見で先輩と同じサイクルでの登校を出来ていなくて。
その間にもし先輩に恋の相手が出来てしまっていたら…と気が気じゃなかったけれど、それは杞憂で終わった。
「ここの所、会えなかったけど…もしかして他の誰かと一緒だった?」
「あの…ちょっと色々ありまして…暫くグループ行動をしてました…」
「…そっか…あ。ねぇ?神咲さん?」
「はい?」
「今日、昼休み時間…空いてる?」
「…?はい、空いてます」
「じゃ、生徒会室に来てくれる?」
「え…?」
「あぁ…やっぱり迎えに行くよ」
「え?え?ちょ、せ、先輩?」
「じゃ、またあとでな」
そういうと、先輩はにこにこ笑顔で3階の教室へと向かってしまう。
「…え?…えーー?!」
私は、今度こそ校門の前で人目も憚らずそう叫んだ。