【短】世界は君色に変わってく


「…うわ…滅茶苦茶凄い美形…」


その時は、まだイケメンだなんて言葉は自分の中で使い慣れなくて。
私の少ないボキャブラリーの限界だった末に出たのが、その言葉。
スラッとした身長に、整った顔。
それがくしゃりとした人懐っこい笑顔になるのが、とても好印象的で…だけど、外見に似合わず結構シャイなのかそれとも人見知りをするタイプだったのか、その時は言葉数が少なかったことを鮮明に覚えている。


2つの委員会の合同打ち合わせの代理に、私が抜擢されたのは、極単純な経緯だった。


「アンナ!アンナ!お願いがあるの!」


それは、夏休みに入る少し前の金曜日の昼休みのことだった。
ぱちん、と自分の顔の前で手を合わせてくるのは、入試の時から意気投合して、今では大親友になった青葉芳恵(ときわはなえ)。


「な、なーに?はながお願いあるって言う時は、なんか面倒なことが起こりそうなんだよねぇ」

「そんなことないよ!少なくても今回は!」

「今回はー??」

「ほんとにほんとに、一生のお願い!!」

「はなの一生は一体何回あんのよー?」


そんな風に返すと、いきなりがばりっ!と頭を下げて、はなは私にこう言ってきた。


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