【短】世界は君色に変わってく
という声が掛かった。
ボボボっと頬に集まる熱。
それは、教室内で好奇心たっぷりな視線を寄越すクラスメイトにもよるけれど…何よりも優雅に教室のドアの所に立っている先輩の笑顔を見たからだった。
「あ、ありがとう」
声を掛けてくれた子に、そっとお礼を言って、私は教室から外に出る。
すると予想外のことが起こった。
なんと、触れるか触れないかくらいの距離に先輩が並んで立って、エスコートしてきたんだ。
「…っ」
びっくりして身を竦めると、先輩は少しだけ困ったような声で、ぽつりとこう言って来た。
「ごめんな?でも、少しの我慢だから」
なんのことだろう?と思ったけれど、その時は恥ずかしさでいっぱいで、なんとも聞き返すことが出来なかった。
かたん
生徒会室の少し固めのドアの音が、やけに耳響いた。
私は教室からここまで黙って先輩に付いてくると、中に入った瞬間、先輩がそれまでの距離を静かに離してくれたお陰で、はぁっと少しだけ息を付くことが出来た。
「ごめんな?嫌だった?」
「…はっ!いえ!そそそんなことないです!!」
「あぁでもしないと…」
「え?」
「あ、いや、なんでもないよ…そうだ…」
先輩の言おうとした言葉の先を聞こうとすると、サッと会話を変えられる。
先輩は自分のカバンから、紙袋をごそごそと出して来て、私に差し出す。
「約束のお土産。ザ・サイパンって、感じだけどな」
と、少しはにかんで笑って。