【短】世界は君色に変わってく


直江先輩を思い浮かべる日が多くなって…彼の情報が耳に入るよう、彼と同じクラスになったことがある、千波先輩と夏休みの間電話でよく話をするようになったり…。


1番変わったのは…朝の電車の時間。


長い長い夏休みが明けて、今までは、今よりも20分くらい遅くて電車の時間もまちまちだったのに。
彼がこの時間に来ることを知って以来…私の通学時間はパシッと定刻通りになり、真っ直ぐに伸ばされた背筋の彼の後ろを追っては、一生懸命…歩くスピードを上げて、彼のことを追い越す。


「おはようございます!」


ただ、それだけを言う為に。
そう…。
それだけの行為でしか出来なかった、私のアピール。


好きな人がいるっていう感覚も、恋をするという感覚も、今まで全然知らなかった私。
そんな私が初めて…異性に対して向けた想いは、とても拙くて…今思い出しただけでも、ちょっと笑ってしまうくらいだ。

< 9 / 36 >

この作品をシェア

pagetop