クールなサイボーグ部長の素顔
「千波、俺と結婚して下さい」

そう言って差し出された小さな白い箱。
その蓋を開ければ赤いビロードの台の中央に輝く石のついたリングがある。

私は驚いて、声も出ぬまま和臣さんの差し出すその箱を凝視する。

「千波、返事は?」

その声にハッとして

「はい!」

元気よく答えて、私は和臣さんに自分から抱き着いた。
すると、すぐに抱き締め返してくれる。
和臣さんの懐に入ると物凄く落ち着く。

「千波、幸せになろう。俺と千波と、お腹の子と三人で」
「うん!」

そう答えるとクスッと笑いあって、触れ合うだけのキスをチュッと交わす。
和臣さんが、私の左手を取ると、箱から出したリングをそっと薬指に通した。

「いつの間に指輪なんて準備してたの?」
「送別会のあと、俺の気持ちは固まってたから。近いうちにプロポーズしたくて準備してた」

そう少し照れたように教えてくれた和臣さんに、私は頬にキスをしてギューッとくっついた。
私をしっかり抱きとめてくれる、その腕に甘える。

「千波、病院に行ったって言ってたな。何かお腹の子の物ないのか?」

そう聞かれて私は離さず持ち歩いていた母子手帳とエコー写真二枚を取り出す。

これが、最初の検診のだよ。



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